業務で作成する文書ファイルをどのように扱えばよいのでしょうか?

日頃何気なく作成しているファイルですが、これはどのように扱えばよいでしょうか? 仕事で作ったファイルは本来会社資産なのに属人的な管理になっているということはありませんか? ここではファイリングをどのように行えばよいかを説明します。

ファイリングとは

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仕事をしていく中で日々増えていく「ファイル」ですが、どのように処理しているでしょうか。仕事で作成している書類は個人の所有物ではなくて会社の資産のはずなのですが、その原則をちゃんと運用できている組織はあまり多くありません。
「この件はあの人でないと分からないのに。あの人のPCに入っている書類が必要なのだけど今日お休みだ。」みたいなことはよくあります。情報が属人化され私物化されています。
しかし、それを解消しようとして社内サーバやクラウドファイル共有を導入しても、どうでもいいファイルが溢れているのに大切なものはないゴミ箱になってしまい、偉い人がときどき思いつきで目の前の物事を解消するローカルルールを作って厳守を命じます。そしてそれが積み重なっていき、その不可視のローカルルールがまた別の新しい私物化された情報と化してしまう。
これでは働きやすい環境とは言えないですよね。
働きやすい環境を目指して、下記のような目標をたてるのがよいでしょう。

  1. ファイルを探したりする無駄な時間を排除する
  2. 業務ノウハウを共同利用して情報の共有化をはかる
  3. クレーム、情報漏えい、訴訟、システム破壊などの不測の事態に対応する
  4. 組織を管理して担当記録者に依存する体制を排除する

削除候補ファイルのピックアップ

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上記の目標を達成するためには、まずは重要なファイルとそうでないファイルを分別します。その抽出方法には下記のようなものがあります。

  • 一定期間アクセスがない
  • 一定期間更新されていない
  • 保管期限が切れている
  • データ容量が不自然に大きい
  • 中身が重複している
  • ファイル名が類似している
  • 業務と無関係な動画・音声ファイル

オフィスにある不要な文書の廃棄には計画性が必要です。「廃棄デー」などを作って全員で共有する時間を持ちます。上述のような廃棄ガイドや、紙の書類も含める時は廃棄手順書を作成するなどして、「このファイルを削除してよいかどうかの問い合わせ」が新たなボトルネックにならないようにしましょう。

また、上述のような外形的な基準だけではなく、中身によっても扱いが変わります。特に、個人の文書ではなく、会社として作成する組織の記録の場合は適切に処理しなければなりません。
組織の記録とは、下記の3つになります。

  1. 法定保存文書。法律で保存義務が課せられているものです。一つの文書が複数の法律の保存対象になることがありますので、法律ごとに保存義務機関や保存条件が異なることがあります。
  2. 訴訟対応用文書。法律では保存義務は課せられてないにせよ、もし訴訟を起こされたとき、または訴訟を未然に防ぐための証拠提出または説明責任を果たすために必要となります。
  3. 組織内利用文書。これは組織活動の記録です。しかしこれには幅があり、製造業の製造図面のように明らかに組織の記録と言えるものから、検討資料のように組織によって判断が分かれるものもあります。この判断基準を組織内で共有しておくことが重要です。

機密文書とセキュリティ

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機密文書は極秘文書、秘文書、社外秘文書に分類できます。
極秘文書は会社にとってもっとも重要な書類のことで、これが漏洩すると会社の事業継続が難しくなり、最悪の場合倒産しかねません。経営に関するほんの一部の社員のみが扱うことができます。
秘文書は、極秘文書ほどではないにせよ、その次に機密にすべき情報のことです。社員の中でも秘文書を扱う関係者にしか閲覧や管理ができません。人事に関することや社員の個人情報などが秘文書にあたります。
社外秘文書は写真であれば誰でも扱うことができるものです。ただし社外には決して公表してはいけません。社員が調べた調査結果や企画書などが社外秘として管理される例になります。

これらの文書は紙の書類であれば収納している棚や部屋を物理的に隔離し鍵をかけてしまいます。そしてその鍵を使える人や合鍵などについて、数字を合わせるタイプのものならばその変更手順について規定します。また誰が見ても分かるようにラベリングを工夫します。
これは電子ファイルの場合であっても基本的な考え方は同じになります。アクセス権限の設定や暗号化を行い、ファイル名やフォルダ名などを使ってラベリングを工夫します。

文書の保管媒体を選定する

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文書の特質を元にして媒体を考えます。特質とは上述した組織の記録や機密文書などです。
まず、電子ファイルだけが良いとは限りません。紙のほうが便利な時は紙を用いるべきですし、法律上紙の原本の保存が求められている場合もあります。またマイクロフィルムを利用したほうが良い場合もあります。
次に、電子ファイルであったとしてもその保管媒体は様々です。社員の各自のPCの中なのか、社内にあるファイルサーバなのか、クラウドなのか。それとも磁気ディスクなどに記録して倉庫にオフラインで保管しておくのか、などです。

保存期間と廃棄

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ファイリングで大切なことは保存期間と廃棄のタイミングを決めることです。
まずは法律で保存期間が定められているものがあります。目安として総務に関わるものは2〜5年、経理に係るものは7年、会社法に関わるものは10年です。
根拠となる法令には、次のようなものがあります。

  • 商法:会計帳簿や賃貸対照表、付属明細書、株主名簿、社債原簿、株主総会議事録、取締役会議事録
  • 法人税法・所得税法:仕訳帳、現金出納帳、固定資産台帳、売掛帳、棚卸表、損益計算書
  • 国税通則法:給与所得者の扶養控除(等)申告書など
  • 労働安全衛生法:一般健康診断個人票など
  • 雇用保険法:雇用保険の被保険者に関する書類など
  • 労働基準法:労働者名簿、賃金台帳、就業規則、出勤簿など
  • 健康保険法
  • 厚生年金法
  • 証券取引法:有価証券届出書、有価証券報告書、半期報告書、臨時報告書など
  • 消費税法:課税仕入関係書類、資産譲渡関係書類、財務関係書類

法定保存義務のある文書以外であっても、文書によって保存期間を定め、その期間が過ぎたら廃棄することは重要です。これがリズムをつくることで、文書に対してPDCAサイクルが働くからです。なぜそうしているのか分からない業務を漫然と継続し、使いもしない書類の山を作ってコストを増していくのではなく、なぜその仕事(アウトプットとしての文書)が必要なのかを考え、業務を行い、行った後は見直して次の改善につなげるというようにしていくためです。
紙のファイルに比べると電子ファイルは保管に要するコストという意味では低いですが、保存期間と廃棄基準という意味では同じように運用するのが良いでしょう。

ファイルの分類方法

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ファイリングのルールを徹底することで、目的の資料を探し出すスピードを上げることができます。
電子ファイルはルールがないと紙以上に探すことが困難になります。ファイルサーバやクラウドを使うとその傾向がますます強くなります。中身のわからないフォルダ名や限りなく深いフォルダ階層などは危険信号です。
文章分類方法を決めるにはトップダウンのワリツケ式、ボトムアップのツミアゲ式、その両者を組み合わせたハイブリット式があります。ワリツケ式は総務部などの文書の主観部門が全社統一的に作成した分類方法を用いるもので、ツミアゲ式は実務担当者自らがルールを作っていくものです。ワリツケ式は現場のニーズに合わず、ツミアゲ式は結局混乱に戻ってしまうというデメリットを回避するために、一定階層まではワリツケ式、その下はツミアゲ式というハイブリット式が出てきました。
その他にも、分類基準など考慮すべきポイントがあります。